■日本のバイオマスの発展のために■

「日本のバイオマス発展について語る:ユーロストーブ(有限会社河西)社長・河西廣實」

何故日本で過去15年の間にバイオマスエネルギーが普及しなかったのか、原因の根は深いと思います。戦後石油エネルギーが主流になってから、日本は木質を止めてどっと石油一辺倒になった。(オーストリアでは自己保有している木質エネルギーと石油の共存の道を選んだ。)日本では原発推進時放射性廃棄物処理問題が宙に浮いたままどんどん進めて来た。(「トイレの無い家」でどうやって長く暮らせるか?)。「オール電化」と聞いても「変だぞ?」と思う人が少ない。日本人の基本的思考回路に問題があると思いますが、過去の過ちを繰り返さず、先どうするかを考えることが重要です。

岩手県も北海道も私も頑張って来ましたが、結果は惨憺たるものです。ペレットストーブは日本では約1万台しか普及していません。イタリアでは100万台以上です。この違いがどこから来ているのかよく考えないと同じ過ちを繰り返すと思います。原発再開に国民投票で94%もの人々が反対してストップさせた、理性と情熱が同居しているイタリアを再び感じた瞬間でした。イタリアでは2002年~2003年頃(薪ストーブ/ペレットストーブ)購入者比率は80/20→20/80に1年の内に逆転しました。ペレットは同じ重量で薪の約倍のエネルギーがある。お年寄りに優しい。煙も少ない。ホームセンターで買える。導入時補助金は無いが消費税は掛からない。ガスより安いし(ロシアからの)ガスが止まっても困らない。私はこのとき初めてイタリアはルネッサンスの国であり同時に理性の国だと思いました。バイオマスというと皆スウェーデンやオーストリアばかり見てきましたが、最もペレットストーブの普及しているイタリアの動きを見ているとバイオマスの先が見えます。現在、ヨーロッパでは太陽熱温水器とペレットボイラーのコジェネレーションは各家庭で受け入れられつつあります。低位エネルギーはこの組合せが最良ということはヨーロッパではコンセンサスであり、各メーカーがこぞって開発を進めています。高位エネルギー(石油・電気)を給湯・暖房には一切使わないという強い意志が必要な時代です。Thermorossi(テルモロッシ)社でもこのようなシステムを発売していて、生産が追いついていないそうです。

 

①    PROGETTO FUOCAを訪問して Pellet News Vol.7 Apr.2010 ㈲河西 河西広実

②    世界遺産の地・熊野で動き始めた 家庭用ソーラー+ペレットコンビシステム 

   ソーラーシステム No.123  2011 Spring ㈲東京木質資源活用センター 川尻哲也

 

このコジェネレーションシステムには貯湯タンクが付いています。この蓄熱という概念をエネルギー全般に広げる必要があります。電気の場合には蓄電池やコンデンサーですが、石油は臨海地域に備蓄している。どんなエネルギーであっても、エネルギー消費の時間変化を吸収する蓄エネルギーの考え方が必要です。ペレットの場合には燃料は夏の消費は少なく冬多いので、年間ペレットをコンスタントに生産して、冬のために備蓄しておく倉庫を各市町村の消費地にアクセスの良いところに建設する必要があります。行政は器具を購入するお金を補助するのではなく、皆が何時でも安くペレットを買える備蓄システムを構築する必要があります。年間12,000台のペレットストーブを販売するThermorossi(テルモロッシ)社では年間コンスタントにペレットストーブ、薪ストーブを生産し続けています。寒くなり始める頃繁忙期になることは日本と同じなのですが、出荷が滞らないように夏場は何千台もストックしておく倉庫がある。エネルギーではなく製品ですが、震災時ストップした「カンバン方式」とは逆の考え方で、人の心にゆとりをもたらします。各市町村に防災用備蓄倉庫がありますが、ペレットの場合、食品のように期限が来て捨てる無駄もないので、生産・備蓄・消費をきちんとネットワークを張って管理すれば安心して暮らせる自然エネルギーの供給システムができるはずです。