■ペレットストーブの高気密・高断熱住宅への設置■

「FE式のペレットストーブは高気密住宅には設置出来ない」という考え方は間違いです。

ペレットストーブ業者の中にはFF式じゃないと事故につながるという業者もいます。

私から言わせれば中途半端な「なんちゃってFF式」「半密閉FF式」を知識も無しに設置する事が最もトラブルを引き起こす行為です。

薪ストーブにおいても高気密住宅へを設置している例は沢山あります。

北海道などは良い例です。設計者、施工業者、ユーザーが正しい知識を持っていればトラブルになる事はありません。

ここでは高気密・高断熱住宅へのペレットストーブの設置についてご説明いたします。

ストーブの気密性については今後の課題ですが下記「FF式」の説明の中に参考となる規格を

掲載してあります。

■高気密・高断熱住宅について

最初に申し上げておきますが、高気密・高断熱住宅について公的に基準はありません。

従って、この段階で高気密住宅でFE式ペレットストーブは設置できないというのは嘘と分かります。基準の数字がないのですから!

住宅の暖房・冷房性能を左右するのはずばり!断熱性です!

快適に過ごすには高断熱こそが主要条件です。

高気密住宅とは建物の隙間を少なくしたものです。

ここで勘違いしてはいけないのが隙間風は無くすが、換気はします。

昔のような隙間風が入るヒートブリッジが存在する住宅ですと高断熱が無駄になるので隙間を詰めているのが現在の考え方です。

つまり高断熱住宅の性能をサポートしているのが気密性です。

断熱性と気密性はセットでお考え下さい。

北海道などの寒冷地では気密性も重視された住宅になっています。高気密は決して良い事ばかりではありません。十分な換気(または隙間)と湿気の調湿が最も大事です。地域によっては中気密がベストという設計士もいます。また高気密で大切な事は換気です。最適な換気を考えていないと冷たい外気が入ってせっかくの断熱が無駄になります。また室内の化学物質も排出されにくくなります。湿気が逃げない高気密は壁内結露の原因にもなります。また壁貫通部の気密性が確保出来ていない場合も壁内結露の原因になります。

■高気密・高断熱住宅の基準について

高気密・高断熱住宅の公的な基準はありませんが、この考え方が浸透したのは住宅金融支援機構が基準とした「次世代省エネ基準」なるものが基になっていると思われます。

住宅融資を受ける際の優良住宅の基準となったものです。日本を各地域に分けて断熱性、気密性など基準化したもので生まれた言葉です。現在では建築技術、建築資材の向上により気密性は一定基準に達したため気密性の基準は平成21年の改正で削除されました。

つまり現在の新築住宅は全てが高気密住宅となっています。高気密住宅だからFE式のストーブは設置出来ないのではなく現在の住宅事情を把握して施工しなければなりません。

■現在の断熱地域区分■

現在の断熱地域区分
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■高気密住宅へのペレットストーブの設置

先ほど述べた通り高気密住宅に限らず、新築の住宅へのペレットストーブの設置においてはユーザー様、設計士様含めてペレットストーブを考慮した設計をご検討頂かなければなりません。また、販売店はその説明、確認をする必要があります。新築にペレットストーブを設置する場合は高気密うんぬんではなく全て設置環境の確認が必要という事です。日本では高気密という住宅でもヨーロッパの基準にくらべたら最低レベルの基準のようです。

ヨーロッパではパッシブハウスなど日本よりも高気密な住宅でFE式のペレットストーブ設置しています。但し、FE式ペレットストーブを設置する場合は気密性が低下するのは事実です。

従って、超高気密を求める場合は温水床暖房、パネルヒーターなどの空気の流れがない暖房システムを多く採用しています。

またキッチンをはじめとする換気扇に対しては給排気を同時に行うシステムや熱交換を行いながら換気するシステム(第一種換気システム)を取り入れています。これは室内の負圧レベルを高めない様にする工夫です。逆に日本のように気密の数値だけを求めて換気に対して十分なケアが出来ていないのが現実です。

はっきり言うとヨーロッパではストーブを設置する室内の負圧レベル、換気システムを把握して適切な設置を行っているという事です。FE式のペレットストーブを導入する以上は負圧を解消または低減させるため外気の導入は必ず必要になります。特にストーブが全く稼働していないシーズンオフの場合、FE式ストーブは煙突を密閉しないと煙突自体が通風孔となり、少なからず隙間面積が増えてしまうのは事実です。ヨーロッパのパッシブハウスの基準は日本より超高気密ですので換気に関してもコストを掛けています。日本の高気密レベルでしたら工夫次第でFE式のペレットストーブを設置可能です。どうしても超高気密を保ちたいお客様の場合は隙間相当面積を比較して換気システムを含めて検討することをお勧めいたします。

また、排気管の壁抜き部は壁内の結露防止の為に気密シートなどの機能を損なわない施工が必要となります。可能であれば外内壁を仕上げる前に壁貫通部の施工をする事がベストです。

■事前に確認しておきたいもう一つの課題

先に申し上げましたが日本の高気密住宅の場合、第三種換気による24時間換気システムがコスト面から採用されている例が見られます。FE式のペレットストーブの場合はストーブを使用していない時(例えば外出時)など室内が負圧になると煙突から外気が少しづつ流入する事になります。これに対してはストーブ側での対策が難しいので、外出時は換気を止めるなどする必要があります。またシーズンオフは煙突が通風孔となりますので煙突トップを密閉してストーブ自体を通風孔となる事を避ける事をお勧めします。これについては施工前に、施主様へ十分な説明が必要となります。

また室内の空気の入れ替えは建築基準法で「0.5回/1時間以上」と決められております。24時間換気の場合は無用に給気口を絞るなどの行為は違法行為ですのでお辞め頂く様ご指導下さい。FE式のストーブを設置してストーブを使用していない時に部屋の温度が下がるのは給気口を絞り過ぎているのも原因の一つです。

特に寒冷地などは本問題が多いと思われますので事前の説明は大事になります。

■テルモロッシのペレットストーブの設置

テルモロッシのペレットストーブを設置する場合について説明します。

■テルモロッシ標準の外気との通気基準

テルモロッシは下記を設置標準に定めています。

■開口部の総面積は100㎝2以上のこと。

■1つの開口面積は出力1kwに対して6㎝2以上のこと。

■常に通気状態を確保すること。

■フロアーレベル(高さ)に設置すること。

100㎝2の開口面積はどのくらいの気密性に影響するでしょうか?

すでに削除された数値基準ですが気密性を表す隙間相当面積C値 

隙間面積cm2/延床面積m2=C値 で考えて見ましょう。

 

これまでの基準(注意:これは既に削除されています。)

寒冷地:2.0以下  その他の地域:5.0以下

 

延床面積100m2で考えれば寒冷地(北海道)を除けばテルモロッシの標準開口面積100㎝2はC値=1相当ですので寒冷地以外の地域では気密性を大きく悪くする大きさではありません。

また換気システムでも同程度の開口面積になっているはずです。その場合は新たに通気口を設ける必要はなく気密性も悪くならないという事です。高気密住宅でFE式ペレットストーブを設置する場合に問題になるのは室内の負圧です。単純に通気口を設けるだけですと気密性が落ちるのは事実ですので負圧レベルを把握して対応しなければなりません。

■圧力センサー

ペレットストーブ
圧力センサー

テルモロッシには全機種圧力センサーが標準装備されています。この圧力センサーは燃焼室と部屋の差圧が0.1mbar(10Pa)以下になると運転を停止します。

ディスプレイは「AL OP」を表示します。


★一つの条件として室内の負圧レベルが-0.1mbar未満であれば問題ありません。

■実際の負圧レベルの測定

弊社ではET1000をプレハブ事務所へ設置して使っています。これまでの話より高気密住宅という言葉だけではなく、実際の設置環境においてテルモロッシのペレットストーブが問題ない室内の負圧レベルの検証を行います。

ペレットストーブ
差圧計

差圧計を使って室内の負圧レベルを検証する方法を説明します。差圧計から出ているチューブは屋外に通じています。


ペレットストーブ
換気扇

1ルームの集合住宅のキッチンによく設置されているレベルの第三種換気扇です。


ペレットストーブ
サイクロンHEXの室内側

弊社事務所はサイクロンHEXを使用していますので外気からの通気は12㎝/8㎝のパイプの間から取り入れています。

隙間面積=62.8㎝2


ペレットストーブ

外気からの通気を遮断します。

この状態で換気扇を回します。


ペレットストーブ

負圧レベルは15~16.5Paです。

テルモロッシのペレットストーブは10Pa未満の負圧レベルにしなければなりませんのでこのままでは使用出来ません。


ペレットストーブ

サイクロンHEXの通気口を開放すると

4.5Pa(10Pa未満)まで負圧を低下させる事が出来ます。

この状況でプレハブ事務所ないで換気扇を回してペレットストーブを燃焼させても問題ないことは実証済です。


■具体的な設置方法

これまでの話をまとめると高気密住宅へFE式のペレットストーブを設置する場合の最大の確認事項は負圧です。また負圧になる最大の要因はキッチンの第三種換気扇です。ストーブを使用する際は換気扇を止めるなどの指導もありますが、適切な負圧対策をお勧めいたします。

テルモロッシのペレットストーブにもΦ5㎝の吸気口を持った機種もありますが外気とこの吸気口をダクトなどで直接繋がないで下さい。直接繋いでしまうと室内が負圧の場合着火ヒーターの周りから燃焼空気が室内へ逆流する為に、着火しない原因になります。ストーブの背面で止めておくのがベストです。

 

1:換気扇を回して負圧レベルを測定して下さい。

10Pa以上の負圧レベルの場合は通気口が必要となります。

実験の結果より10Pa下げるのに約63㎝2の開口面積が必要です。

穴径にすると約9㎝の通気口が必要になります。

<負圧の解消は通気口を設けるしかありません>

高気密住宅でキッチンの換気扇を回すと室内が負圧(10Pa以上)になる場合は通気口を設けるしか方法がございません。しっかりした設計士さんであれば最初から解消の手立てを講じているはずですが・・・・。

講じていなければ後加工で追加しましょう。

通気口は一般的なもので構いません。

モノタロウさん販売の通気口
モノタロウさん販売の通気口

左は自然通気型の通気口です。数百円で購入できます。但しストーブを使用する際は手動で開にして使わない時は手動で閉にしなければ外気が常に侵入する事になります。


ユーロストーブのお勧めは負圧が生じた時だけ開く差圧レジスターという製品がお勧めです。

こちらは負圧が生じなければ閉のままですので気密性を損なう事はありません。また負圧がなければ冷たい外気も入って来ません。寒冷地の方にはお勧めです。

一例ですが左は「大建プラスチック(株)」さんの差圧式レジスターです。

低圧の差圧でも開く様になっています。

他のメーカーもございますので「差圧レジスター」で検索してみて下さい。


<通気口を設ける場所>

通気口を設ける場所はストーブの背面が理想的です。また差圧レジスターなどはキッチンの換気扇による負圧対策として開発されたものですのでインテリア性も考慮されたデザインとなっていますのでわざわざ隠す事もないでしょう。直接冷気が当たらない場所で床上1.5m以上の場所に設置すれば暖気とで緩和されるはずです。本来の高気密住宅であれば最初からこの様な配慮がなされているはずですが・・・。

<給気を取るもう一つのポイント>

ペレットストーブ

現在の高断熱住宅の断熱の主流は外張り断熱です。内張り断熱に比べてコストは少し高くなりますが気密性が確保しやすく壁内の結露も防ぎ易いからです。必然的に高気密住宅となります。

左図は高断熱住宅の壁の概略図です。

外壁の内側に通気層があります。ここから取る事をお勧めします。標準的な高断熱住宅でしたらこの通気層は外壁全体へ施されており外気を緩やかに通気するよう設計されています。従って極端な冷気や突風が吹きこむことはありません。


■高気密住宅へのテルモロッシのペレットストーブの設置のまとめ■

★設置する部屋の負圧が10Pa(0.1mbar)以下であるか確認すること!

★負圧レベルに応じて通気口を設けること!

■高気密住宅の落とし穴■

高気密住宅の落とし穴として新型コロナウィルスの様な環境が将来にも影響してきます。そのような環境下での高気密住宅に対してのユーロストーブの見解をブログで綴ってみました。参考にご覧下さい。

日本の住宅は高気密化が進んでいます。これは地球温暖化が進み、気象の変化の中で住環境をより影響を受けない設計にしつつあるからです。

特に省エネに対しては気密や断熱によりエネルギー消費を抑える設計になっています。

このこと自体は良い事です。

しかし、2020年は世界を揺るがす大きな問題がありました。

それは「新型コロナウィルス」の出現です。

他のインフルエンザと同じで今後も付き合って行かなければならない相手です。

予防策は「換気」です。

高気密住宅で冷暖房が施された密閉空間で持ち込まれたウィルスは長時間密閉空間に留まる事になるでしょう。

窓を開けて台所の換気扇の様な強力な換気扇を回せば空気は循環しますが冷暖房効率は落ちてしまいます。窓を開けないと室内は陰圧になり息苦しい環境となります。

昔の隙間風が吹き込む家とは大違いですね。(死ぬ訳ではありませんが)

日本の高気密の大きな間違いは換気への配慮が足りない事です。

冷暖房費や設備費をケチって排出した分の空気を絞って取り入れている状態です。

北欧のバッシブハウスは以前は排出する空気と同じだけ熱交換して取り入れていました。

しかしながら、近年熱交換機のコストを削るため装着していないパッシブハウスも増えて来ているようです。これは住環境に良い傾向ではありません。

今後も新たなウィルスの出現は否定出来ません。

理想は高気密な設計で換気システムを見直した住宅設計が理想ではないでしょうか。

昔ながらの隙間風は防いで、息苦しくない空調管理(換気)にコストを掛けて良いのではないでしょうか。(息苦しいはオーバーですが・・・)

省エネを確保して健康的な住環境を目指しましょう。

無害な外気を取り入れる事も大事になって来ます。

次のステップへ進みましょう。正しい高気密住宅への転換の時期です。