■ペレットストーブの排気筒について

 

 ヨーロッパのストーブメーカーの人が来日したとき、電車の窓から風景を見て「どこの屋根にも排気筒が無い」といって驚いていました。 

私が15年前イタリアのThermorossi社を訪問したとき、社長は満面の笑みをたたえながら工場の排気筒が立派であることを自慢していました。 

日本では排気筒の無い家は当たり前だし、排気筒を自慢するなんておかしな話です。 

しかし、これ等の事から「ヨーロッパでは排気筒は生活必需品に違いない。」と感じました。確かにヨーロッパでは地域によって違いますが、田舎に行けば煙突や排気筒のある家が多いです。 

一方、日本では暖房機具が囲炉裏、火鉢、炬燵、石油ストーブ、ファンヒーター、エアコンと変遷してきて、元々排気筒との縁が薄いです。 私もペレットストーブを輸入しようと思ったとき「排気筒なんて何でもいい」と思っていました。最初に断熱二重管を勧められたときには「こんなに立派な排気筒を付けなきゃいけないんだ」とため息が出ました。      

(有限会社河西 河西廣實談) 

 

ここではペレットストーブの排気筒(煙突)について、ヨーロッパのスタンダードなEN規格を交えて詳しく解説いたします。このEN規格についてはペレットストーブがそうであるようにEN規格はISO規格になり日本も準拠しなければならなくなる筈です。残念ながら日本のペレットストーブを取り巻く環境、認識はそれぼど遅れています。

ここで解説する内容は先日の「ペレットストーブ安全技術講習会」にて河西が講演した内容です。

■EN1856-2規格ペレットストーブ用排気筒について

ヨーロッパでは各メーカーは下記のようなコードで排気管の用途を規定しています。

SAVE社のペレットストーブ用の排気筒はの例は以下で規定されています。

①は排気温度250℃以下

②は排気温度250℃以上

 

① CE EN1856-2-T250-P1-W-V2-L80100-0100

② CE EN1856-2-T600-N1-W-V2-L80100-G375NM

 

上記各節の内容

CE:欧州議会評議会9.03.2011、CE0694 適合マーク

EN1856-2:ヨーロッパ規格EN1856-2 2009 適合

T-250:耐熱温度基準 排気温度によりガスケット材質を変えます。

    250℃はヴァイトンシール

    200℃はシリコンシール

P1:圧力分類

  P1は排気ファンを使用するストーブ。主にペレットストーブ。

  N1は排気ファンを使用しない薪ストーブなど。

  これはP1は200Paにて0.006L/sec ㎡以下、N1は40Paにて2L/sec ㎡以下の漏れ量を

  規定しています。ペレットストーブ用の排気筒は薪ストーブ用煙突の約1/83のわずかな

  漏れしか許されませ。

W:結露する排気ガス用に使用できる。

V2:耐腐食レベル。腐食テストでの合格品です。

  SAVEの場合は内外共に琺瑯引きなので腐食しません。

L80100:L80は材質がスチールの意味です。100は厚さ1mmの意味です。

     琺瑯引きコーティング層を含めると、厚さ1.2mmになります。

0100:最初の0は煙道火災の際シールリングの交換が必要になります。

    最初がGの場合は煙道火災に絶えます。

    SAVEの場合、排気筒自体の耐熱温度は850℃です。

    次の100は煙突と可燃物の離隔距離です。

テルモロッシのペレットストーブの場合、エコサーモ1000、3001などは排気ファンを装着しており排気温度は平均184℃、最少火力時102.9℃、最高220℃ですからT250-P1の排気筒を使用します。

この様な温度表記はペレットストーブのヨーロッパ規格EN14785:2006に準拠したものです。

日本では日本製はもとよりヨーロッパ製のペレットストーブを輸入されている業者でもこの様な規格を理解している人はほんの一握りです。国産のメーカーには安価なガスストーブ用の排気筒を使うメーカー、販売店がいますが安全のためストーブの性能を把握して、適切な排気筒を使うことをお勧めいたします。

また近年では耐食性についても規格が変わってきております。木質燃料を燃焼させる際に発生する木ガスは酸性度が高い(pH1.5~3.75)ので、耐食性の高い素材が必須です。SAVEのplusシリーズは内外面は全てエナメルコーティングが施されておりますので耐食性に優れています。また厚さは1.2mmで剛性がありますのでペレットストーブの排気管として最適です。最新の直管は厚さ0.7mmで軽量化されています。ステンレス管ですとSUS316L相当以上の耐食性が必要です。

ペレットストーブと排気筒(煙突)は相互に必要不可欠な存在です。両者の必要な条件が適合合致して初めて高性能で安全なシステムを構築できます。

ほとんどのペレットストーブには強制排気ファンが付いています。これにより排気筒内部の気圧は室内の気圧より高くなるので、排気ガスが室内に漏れるのを防ぐためP1クラスの気密度が要求されます。P1クラスの気密度はエラストマー製ガスケットによって手軽に実現できるので、エラストマーを使用したφ80mmとφ100mm【ジョイント部オスの外径】のペレットストーブ用排気筒が標準化され、どのメーカーの部品でも接合できるシステムになっています。

使用されるエラストマーは主にシリコーン樹脂(耐熱温度200℃)とヴァイトン樹脂(耐熱温度250℃)製の山型ガスケットです。これらの樹脂の利便性と排気温度をなるべく低くしてシステム全体の熱効率を高くする目的に合致するため、ペレットストーブ本体の排気温度は通常250℃以下になるよう設計されています。

本体の排気温度を200℃以下にするとシリコーン樹脂ガスケットだけで済むのでより安価で良いのですが、システム全体として排気筒内に結露しないこと【排気筒(煙突)トップ出口の排気温度を60℃以上に保つこと】に留意する必要があります。正確には【排気ガスの排気筒出口における湿度を飽和蒸気圧以下に保つこと】が肝要ですが、排気筒出口温度が60℃以上あれば、ペレット燃焼の場合他の要因(含水量、燃焼空気の温度・湿度と割合)を総合して結露しないであろうということです。

着火直後から約60℃に達する時間帯は一時的に結露し蒸発しますから、なるべく早く蒸発するよう最初は少し強めにもやすことをお勧めいたします。

ペレットストーブ本体の排気温度が排気筒出口で60℃以下の場合には熱ロスの少ない二重排気管が必須です。

また、排気量の大きな高出力ストーブの場合にはペレットストーブ本体の排気口がφ100mmの場合が多くなります。この場合にはリデューサを用いてφ80mm排気システムにすることは禁止されています。

逆のペレットストーブ本体の排気口がφ80mmをφ100mm排気システムにすることは排気抵抗が減少するので、むしろ好ましい配管と言えます。